遺言書作成の基礎知識/大和海老名綾瀬 相続サポートセンター(綾瀬市、大和市、海老名市)

遺言書作成の基礎知識

遺言は、自分の死後の財産や身分事項に法律上の効力を生じさせることを目的として行う、一個人単独の行為です。 「遺言書」に書かれた内容は、相続人に対して一定の「法的効力」を及ぼします。

従来、遺言という言葉は、人の「死」を連想させる不吉なものとして嫌われる傾向にありましたが、近年は、相続人同士の争いを回避させたり、財産の保護や有効活用のために遺言書を上手に利用することが注目されてきています。

遺言能力(遺言をできる人)

遺言は、満15歳に達すれば、未成年者や被成年後見人であっても、意思能力さえあれば、単独でできるものとされています。

ただし、成年被後見人については、事理を弁指揮する能力を一時回復した際、医師2人以上の立会いを要件として、遺言をすることが可能です。

法定遺言事項(遺言で何ができるのか)

遺言で、法的な効力を生させることができる事項のことを「法定遺言事項」とか「遺言事項」といいます。 「法定遺言事項」に該当しない内容については、法的な効力を生じません。

以下、「法定遺言事項」です。

1.身分に関する事項
* 子の認知
* 未成年者の後見人の指定
* 後見監督人の指定

2.相続に関する事項
* 推定相続人の廃除、排除の取り消し
* 相続分の指定、指定の委託
* 特別受益者の贈与分の持ち戻し免除
* 遺産分割方法の指定、指定の委託
* 遺産分割の禁止
* 相続人相互の担保責任の指定
* 遺留分減殺の順序、割合の指定

3.遺産の処分に関する事項
* 遺贈
* 財団法人設立のための寄付行為
* 信託の指定
4.遺言執行に関する事項
* 遺言執行者の指定、指定の委託

5.その他の事項
* 祭祀継承者の指定
* 生命保険金の受取人の指定、変更
* 遺言の取り消し

遺言の撤回

遺言者は、遺言の内容をいつでも自由に変更したり、撤回したりすることができます。 その他、以下の場合は、遺言が撤回されたものとみなされます。

(遺言を撤回したとみなされる行為)
* 遺言を撤回したり、旧遺言と抵触する新遺言がある場合は、それに該当する部分。
* 遺言書の内容と抵触する「生前行為」を行った場合は、その抵触する部分。
* 遺言者による遺言書の破棄は、破棄した部分。

遺言書の作成が必要な人(トラブルが予想されるケース)

以下はいずれも、遺言書がなければトラブルに発展する可能性があります。
つまり、以下に該当する場合には、遺言書の作成が「必須」です。

1.夫婦間に子供がなく、妻に全財産を相続させたい場合
夫婦間に子共がない場合のケースです。この場合、相続人は「妻と親」あるいは「妻と兄弟姉妹」の組み合わせとなります。遺言書を作成すれば、遺留分がない兄弟姉妹への分配を防ぐことができます。

2.財産が自宅(不動産)しかない場合
財産が自宅(土地・建物)がメインで、預貯金が少ないケースです。この場合、複数の相続人に分配するならば、自宅を売却せざるを得ません。妻の安定した生活を守るためには、遺言書の作成が必要です。

3.事業を細分化せずに継承させたい場合
事業や農業を営んでいる場合のケースです。複数の相続人に分配してしまうと、事業規模が縮小されたり、事業経営が立ち行かなくなることが考えられます。このような時は、誰か特定の相続人に事業を継承させる遺言書を作成することが必要です。

4.相続人が一人もいない場合
相続人がいない場合には、特別な事情がない限り、財産は国庫に帰属してしまうことになります。お世話になった人などに財産を譲るためには、遺言書が必要です。

5.子供を認知したい場合
愛人との間に隠し子がいる場合のケースです。生前に認知をしてあげられない事情がある場合でも、遺言書で認知をすることが可能です。

遺言の方式(「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」)

「一般的」な遺言の方式には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つがあります。

1.自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、その名前のとおり、自分(自筆)で遺言書を作成する方式です。
自筆証書遺言が法的に有効となるためにの要件は次の4点です。

1. 全文を自筆で書く!
2. 日付を書く!
3. 署名をする!
4. 押印する!

自筆証書遺言の利点は、自宅で手軽に作成できる点ですが、注意する点があります。それは、方式不備で遺言が無効になる危険性があることです。その他、紛失、改ざん、遺言書が発見されないことなどへの対策が必要となります。自筆証書遺言の作成に自信のない方は、行政書士などの法律の専門家にサポートをしてもらうか、次に述べる公正証書遺言を作成されることをおすすめします。

2.公正証書遺言
公正証書遺言は公証人という法律の専門家に作成してもらう遺言書です。そのため、公正証書遺言は方式不備などによる遺言の無効の可能性が極めて低いといえます。そのほか、公正証書遺言の作成後は公証人によって保管されるため、紛失の心配もありません。ただし、作成する段階においてではありますが、以下のような「負担」もあります。

(公正証書遺言の「長所」)
1. 方式不備による遺言の無効の危険性が極めて少ない
2. 改ざんや紛失の心配がない
3. 相続開始後、家庭裁判所での「検認」の手続きが不要

(公正証書遺言の作成時の「負担」)
1. 公証役場へ行く必要がある
2.「証人」2人を立ち会わせる必要がある
3.「証人」に遺言の内容を知られてしまう
4. 自筆証書遺言に比べて、費用がかかる

「証人」になるためには一定の条件があり、相続人や未成年者等がなることはできません。証人は遺言の内容を知ることになるため、信頼の置ける第三者に依頼することが肝要です。法律で守秘義務を課されている行政書士、司法書士、弁護士などの国家資格者が証人になればより安心です。

遺言書は、いつ書くべきか

高齢者が亡くなる直前に作成した遺言書が、「正常な判断能力を欠く状況にある」という理由で無効と判断されてしまうトラブルもあり得ます(例:「痴ほう症」等による精神疾患)。

遺言書は、「頭脳」・「精神」・「身体」が健全な時に、早めに作成されることをおすすめします。